
歯の不調や突然の違和感は、私たちの日常生活に大きな影響を与えることがあります。
特に、過去に神経の治療を受けた歯や、長年使っている差し歯などに、これまで経験したことのないような症状が現れると、不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
歯の根元に亀裂が入ってしまう「歯根破折」は、その進行度や状態によっては、自覚症状がほとんどないまま進行することもあるため、注意が必要です。
今回は、歯根破折によって引き起こされる痛みのメカニズムや、たとえ痛みを感じなくても注意すべきサインについて、詳しく解説していきます。
歯根破折で痛みが出る原因
神経への刺激による痛み
歯根破折が生じると、亀裂の深さや広がりによっては、歯の内部にある神経にまで刺激が伝わるようになります。
特に、歯根破折線が象牙細管を経由して歯髄に達した場合、外部からの冷たい刺激や熱い刺激、あるいは歯ぎしりや食いしばりによって生じる圧力などが、直接神経に伝わり、鋭い痛みを引き起こすことがあります。
この鋭い痛みは、歯根破折が活動性を持っているサインの一つと考えられます。
炎症反応による痛みの発生
歯根破折線から細菌が侵入すると、歯の根の周囲組織に炎症を引き起こすことがあります。
この炎症反応は、体内で様々な化学物質を生み出し、これらが歯周組織や歯根膜にある痛覚神経を刺激します。
炎症が慢性化したり、歯の根の先端周辺にまで広がったりすると、持続的な鈍痛や、押すと痛む圧痛として感じられるようになります。
噛む力が加わると生じる痛み
歯根破折によって歯の根の強度が低下すると、普段の噛む力(咬合力)に耐えきれなくなることがあります。
噛む力が加わった際に、破折した歯根部分がわずかに動いたり、亀裂が広がったりすることで、周囲の歯周組織や歯根膜が圧迫されたり牽引されたりします。
この機械的な刺激が、歯の周囲組織の炎症を悪化させたり、残存する神経を刺激したりして、噛んだ瞬間に「ズーン」とした鈍い痛みや、違和感、不快感として現れることがあります。

歯根破折なのに痛みがない場合がある?
神経のない歯はそもそも痛みを感じない
歯の神経を抜く治療を受けた歯は、痛覚を感じる神経組織が失われています。
そのため、たとえ歯根破折が起こったとしても、神経自体が刺激されることによる鋭い痛みを感じることはありません。
しかし、神経がない歯であっても、歯根破折線から細菌が侵入し、歯の根の先端周辺の骨組織に炎症(根尖性歯周炎)を引き起こした場合には、周囲の組織を介して鈍い痛みを感じることがあります。
破折の進み方や場所による痛みの違い
歯根破折の発生部位や進行の仕方によっては、痛みが現れにくいことがあります。
例えば、歯根の先端部分のみが破折している場合や、歯根の側面に沿って水平に亀裂が入っている場合、あるいは歯根破折線が歯髄に達していない場合などは、初期段階では自覚症状としてほとんど感じられないことがあります。
これらの破折は、レントゲン写真でも発見が難しい場合があります。
初期段階では自覚症状が出にくい
歯根破折が起きたばかりの初期段階では、亀裂が非常に細く、歯の構造的な弱化も軽微であるため、噛んだり触ったりしてもほとんど違和感がないことが一般的です。
歯の根の内部のわずかな変化は、外側からは確認できず、患者さんが自覚できるような明確な症状が現れるまでには時間がかかることが多いです。
そのため、症状がないからといって、歯根破折の可能性を完全に排除することはできません。

歯根破折の痛み以外のサイン
差し歯の不適合や脱離
歯根破折によって歯の根元が不安定になると、その上に建てられた土台(コア)や被せ物(クラウン)、いわゆる差し歯がしっかりと支えられなくなります。
破折した部位からのぐらつきや、歯根膜、歯槽骨といった歯を支える組織の破壊が進行すると、差し歯が突然取れてしまったり、以前よりもぐらつきが大きくなったりすることがあります。
噛んだときの違和感や不安定感
歯根破折によって歯が本来持っている固定性が失われると、噛むたびに歯がわずかに動くような感覚や、歯が浮いたような違和感を覚えることがあります。
特定の位置で噛むと鈍い痛みを感じたり、噛むこと自体が不安定に感じられたりすることもあります。
これらの微妙な感覚の変化は、歯根破折の初期サインである可能性があり、見逃さないように注意が必要です。
まとめ
歯根破折は、神経への刺激、炎症反応、噛む力の負荷といった要因によって痛みを引き起こしますが、神経のない歯や初期段階では、特徴的な痛みがないまま進行することもあります。
差し歯のぐらつきや脱離、噛んだときの違和感など、痛み以外のサインにも注意を払うことが重要です。
これらの症状は、歯根破折が進行している兆候である可能性があります。
もし、ご自身の歯に気になる症状が現れた場合は、自己判断せずに速やかに歯科医師に相談し、正確な診断と適切な治療を受けることが、大切な歯の健康を守るための最善策となります。


